第49章 ロッコ 再び宇宙へ その2

返事をする代わりにロッコはスイッチをきった。
ロッコはid星を攻撃する気には、どうしてもなれなかった。
ましてや小さいとはいえ核兵器を宇宙で使うなんて、、。
ボクにはボクの作戦があるんだ!

そしてその時が来た、、。
突っ込んでくるid星の真っ正面にアロー号の位置を、あらためて置き換えた。
地上でもこの一連の動きは逐一興奮したアナウンサーによって報告されていて、ずらりと並んだ著名な学者達によって解説されていた。
このときも、ロッコのとった行動を不可解とばかりに解説し、
「このまま第一弾のミサイルを発射し、もしかわされたとき、第二弾の発射するより早くアロー号の機体はid星によって粉々にされてしまう、、!!そしてそのまま地球に衝突!」
「何故、正面にまわったんだろう!?」
「折角4機もミサイル積んでいるのに、かわされても二弾三弾と打ち込むチャンスがあるのに、、もう終わりだ! やっぱりネコじゃ、、、」
「いや!!」
「ロッコはイッパツで沈める自信があるんだ! それを我々に見せたいんだ、、。きっと!」
「でも、もう既に地球への核の影響のある50km圏内にはいってしまう、、、id星を破壊しても地球に放射能が降って来るようでは、、
何のために行かしたのか、、、」
と、特にロッコを当初から認めようとしなかった学者達にはいちいち批判されましたが、もとより世界中の人達の圧倒的な支持を得たのでここまできたのですから。

その人達がいま固唾をのんでロッコを見守っているのです。
一方、オロイルロッカ島に陣取っていた博士、サッチーナ、お父さんお母さん、きいちゃん、ソロバン先生、V.R.Vのメンバー、しずこ、ルナ達は、博士の解説を聞きながらロッコの一挙手一投足に注目して見ていましたので、
皆“ロッコならだいじょうぶ”と、心配無用でしたが、やはり世の中、何が起きるか分からないので、一抹の不安はあったようでした。
ただ、核兵器はロッコも皆も絶対反対でしたので使わない事は承知していました。その処理に付いても博士達からアドヴァイスを受けていました。

id星は益々大きくアロー号に向かって飛んでくる。

ロッコは思った。最初の作戦Aプランですべてがわかる。
これが失敗だと、、、すべてが終る。
目の前にある多少、時代がかったヘッドギアを頭に装着した。

“作戦Aプラン GO!”
と、たった一人の機内で大きな声をあげて赤いボタンを押した。
アロー号の先端がパクリと開いて特製スピーカーが1m程前面に押し出された。
同時にものすごいオトがid星に向かって飛んでいった。

“ドカド~ン、ドドカ~ン、ドカ~~ン“

驚いて急ブレーキをかけたのはid星だった。
いつもぶつかってこそ得られる破壊音がいきなり目の前にとんできたのでびっくりしたのです。
どうしたんだろう!? 事情がのみ込めぬままid星は習性で取り込んでしまった。
この爆発音の波動は一定の波形となってid星と正面衝突する予定だったけれど、ロッコの計算よりid星の動きが細かく30度ほどずれて飛んでいってしまった。
しかし驚いた事に瞬時にその事を分析し30度修正して正面から余す事なく、浴びる様に吸収したのはid星の方だった。

いける!! ロッコは小躍りした。

作戦BプランGO!
直ぐに第2弾が放たれた。
バギュダ~ン、バギュダ~ン、バギュダ~ン、ゴ~ン
これも相当な破壊音です。
id星は微動だにせず、
この波形となって飛んできたオトをすべて身に浴びる様に取り込んだ。

ようし作戦Cだ!
ロッコはid星の位置より15度ずらして打ってみた。
GO!!
ドギャギャギャガ~~ン、ドギャギャギャガ~~ン
凄まじいオトです。ヘッドギアで耳を塞いでるロッコでさえオトの激しさに一瞬聴力を失ったおもいです。

しかし、id星は難なく15度修正を行い、取りこぼす事なくすべてを吸収しました。
やっぱりそうだ!

こののち、ロッコはどんどん激しさを増した破壊音をid星に浴びせ続けました。
id星は何が起きているのか、分からないまま、自分の活きる糧である破壊音が突然目の前に次から次と、とんで来るので片っ端から吸収し続けたのでした。
自分自身の生きていくためのエネルギーが、ここにはこんなに沢山あるんだ。それもどんどん湧いてくる。

id星は生まれて初めて幸せ感を味わっていました。
id星のエネルギー貯蔵庫はかなり大きい。しかもそれが三基ある。オトをエネルギーにしているのは宇宙広しといえid星だけだ。当然、それが枯渇する事を一番恐れている。しかし三基の貯蔵庫は既に満タンとなり残りのスペースもオトの塊で溢れ、もうパンパンです。
ラクビーボールの形が特徴のid星もいまやバスケットボールになってきてしまいました。もう、これ以上は無理とばかりに重層に重なりあった硬質な外形の様々な接合部分からシュパー、、シュパー、、と白い煙が苦しげに吹き出ています。
ロッコの作戦どうりの展開です。
でも、id星の外形がこれほど変わるとはさすがに思っていませんでした。

しかし、とにかく止まった。止まった。
よかった、、
ふぅう~、、、と息を吐いた。

「うむ、、!」
チャンスウィンスキー博士が呻いた。
「いや、いやぁ、、さすが、、、」といいかけて、
「、、、、、、すごい! こういう発想があったとは、、」

星に追突することが目的ではなくその衝撃音が必要なid星にとって此のあとからあとから涌き出てくるエリアは不思議で幸せなところでした。

ロッコは慎重でした。
id星が地球を狙うためにはいったん5万kmの彼方まで戻らなければなりません。どう見てもいまのid星にはとても無理です。好きなものをいっぱい食べ過ぎた子供の様にまったく動く事すら出来ない有様です。

これでしばらくは地球はだいじょうぶだ!
一幕はロッコの作戦通りの展開でした。

地球は大騒ぎです。ロッコの名前を口々に、もうすべてすんだかの様に皆、手を取り合って、抱き合って、、地球の運命が終らなかった事を喜びあっています。

しかし、このままでは時間さえたてば、いずれ元のid星に戻ってしまいます。
問題は第二幕です。
id星を“諭“さなければなりません。

ロッコは、黒い自分の背丈よりはるかに大きなケースを取り出すと大事そうに開いた。
小さな船内に一瞬新しい光が飛び跳ねた。
眩いばかりの黄金色に輝いたエレキギターを取り出すとサッと背中に背負い特製の長めにした革のベルトを器用に体に巻き付け、最期に腰のあたりでカチッとしめた。これは小学校に通った時にランドセルでさんざん練習していたので難もなく決まった。
コックピットに戻り自動運転装置のボタンをオンにして行き先を設定した。表示窓にたくさんの星、惑星、銀河などの名が次々と現れた。表示に太陽となったところで止めた。
ロッコは、顔の何倍もある特製の宇宙帽をかぶった。
さ、いくぞ!!

プシュウ、、、
1番目の扉が開いた。
ここで外気との調整が計られる。
2番目の扉の前に立った。
2番目の扉が開く前に1番目の扉が閉まった。
ゴクリと喉がなる。右上部にある白いロープの端をはずし腰のフックにカチャリとはめた。

プシュウ~、、、
2番目の扉が開いた。
ふあっと、後ろから誰かに抱えられ、すうっと差し出された様に前にでた。
ゆっくりと後転しながら、身を翻しアロー号の側面に足を突き出した。
ガチッ、、ガチッ、、とロッコのカラダは船体に90度になりながら、S極とM極に別れたマグネットシュウズが心地よく船体に吸い付く。
ガチ、ガチ、、ガチガチと一歩づつコックピットの真上にきた。
ロッコはid星を見た。
パンパンにまあるく張りつめた、
内部の圧力がどれほど強いのか物語っていました。
白い煙がその隙間から飛び立つ様にシュバー、シュバーと盛んに吐き出しています。

あれ!?
隙間から、ピンク色がちらりと見えました。
どす黒いid星の外観には不釣り合いな色なのでロッコは意外な感じがしました。
id星もロッコを見つめていました。小さな船体の上に仁王立ちしたロッコを見ても敵意はまったく感じません。むしろ体中に充満している“オト”のエネルギーとロッコの関係を計りかねていました。そしてこの小さな異形のモノが次に何をしだすのか興味さえ抱き始めていました。頭上には同じく星達がロッコを一目見ようとふたたび集まってきました。

ロッコは黄金色のギターを構えました。
まずA音をはじきました。たからかに、、。
すぐに、かえってきました。

少し驚いたロッコは頭上を見上げて納得しました。
それはロッコの演奏を待ちかねているかの様に何千何万という星が隙間無く頭上を埋め尽くしこれから始まる“スペースファンタジー”を楽しみにしている様でした。ロッコの放ったオトはそれぞれの星に反響して戻ってきたのでした。

えへ!これは都合いい。
照明チェック、OK! 音響チェック! OK
独り言の様に言ってロッコの“ひとりスペースファンタジーショウ”が始まった。