第45章 モランゴーニュへ、老師をたずねて−その1

ガタガタガッタン、、、

あ、いたぁっ〜
したたかに天井に頭をぶつけてしまったロッコ。
後部座席で、ロッコ座りをしてしっかりシートベルトをしていたつもりだったけれど、肩がなく胴が細いロッコにはあまり役に立たない。悪路に車輪をとられてしまう小さくて車体の軽い電気自動車は、田舎の整備されていない道などにときたま出会うと子供や体重の軽いものは、ピンポン球の様に跳ね回るコトを覚悟していなければならない。
Ilebianから1時間ほど西に走ってきた。Caizeの町が現れた。

「だいじょうぶですか? いま、Caizeを通りましたから もうあと3、40kmです。もうすぐですよ、ロッコさん」
ロッコって呼んでください。

姉のソロバン先生に頼まれてロッコを乗せて目的地へ向かったダリルだったが、ソロバン先生からきつく言い含められていた。
「人類にとって最も大事な存在だからね、ロッコは、。くれぐれも事故の無い様に、頼みますよ」
ダリルにとってもとても緊張した一日でした。

「あぁ、でもこんなに有名なネコさんのロッコ、、、に、、え!?、、なんかへんだなぁ、、」
ロッコは笑いながら、
だからネコのロッコ! ネ。
ダリルとはこんな調子で2時間もドライブしてきた。
ロッコはあたりの風景を眺めてみた。
窓の外は一面オリーブ畑だ。
もうすぐだ、、鼻を左右上下に素早くひくつかせる。
ロッコにとって初めて訪れるところではあったが、その動物的カンはまぎれもなく目的の村が近いことを示していた。
どこまで続くのかと思われた長く広い丘陵地帯も、どうやら終わりを告げるようだ。
正面を遮る様に小さな山が陣取っている。なだらかな上り坂になっていて頂上までいかなければその先はまったく見えない。

そうだ聞いていたとおりだ。
そしてその頂上についたら、
“車を止め
降りて
呼吸を整え
村全体を眺めて
それから
ゆっくり
村に入る様に
そこが村の入り口だから、、、。”

まるでなにか儀式の作法のように博士から言われたことをロッコは思い出しました。

そこで、、止めてください。
坂を上がりきって平らな道を少し走ったところで前方がやや下り坂に入り始めた。ロッコは車を止めた。
ガチャ、
こんなに長く車に乗っていたのは初めてだったので、体が重い。
一歩を降ろしてみたときロッコは生まれて初めて経験する足のしびれを感じた。
全く踏み出した感覚がない。こんなことってあるんだ、、!
きいちゃんがよく食事中「つった!つった!」て叫んで足をバタつかせたり、立とうとして、ごろりと転がって「し、し、しびれた! 足がしびれた! 」と、わめいていたのをよく憶えている。
まさか自分がそうなるなんて、、、。
2本足の人間て何をやるのも動きがとてもスロウだと思っていたけど、、
これじゃあ、無理ないな、、。
2足歩行の難点をまたひとつ憶えたロッコでした、、。
ロッコはここでこけたら大変だ、と、ドアを掴みながら膝まで隠れるほど深く育った草花の隙間に2歩目を慎重に降ろした。
どうやら右足は大丈夫そうだ。
でも左に感覚が戻ってない。まだ、ドアは離せないな、、と、そのとき張り付くような強い視線が注がれていることに気づいた。
ダリルだ、。ダリルは何かびっくりしたものを見てそれをどう理解すべきか、答えの出ないまま次々と起こる彼にとっては信じられないことの連続に顔もこわばったまま、
それじゃあ、ダリルさんありがとうございました。というロッコの言葉に、
「あ、、いや、どうも、、ロッコ、、さん、、」とかろうじて、答えて去っていった。

ロッコは村全体を見渡した。
ええ〜えぇ! この村かぁぁ〜本当に聞いてた話しと随分違う。
間違いじゃないかな。
想像と全く違う。
ロッコは唸ってしまった。
思い描いていた景色とまるで違っていたから。
この国もこの国を囲むほかの国々も都市を離れて地方に出るとその田舎の風景の在り方には、一定の似た秩序があった。特に村々の集落を見ると容易にそれがみてとれる。
ロッコもこの村の話しを博士から聞かされた晩、分厚い“各国の村の写真集”をみていた。
そこには、平地にあるものから山の斜面を利用したものまで小さな村や町、港を抱えた味わいのある漁村の風景等たくさんでていたけれど、ここは大きくなにか違う。
目の前に2mほどの杭が打ってある。杭には朽ち果てる寸前の飾りっけのない板がついてあり、もうほとんど消えかかった文字で何やら書かれている。
ロッコは板に顔がつくくらいまで近づきこれを読んだ。
“モランゴーニュ、ここが入り口、、一切の車両の出入りを禁ず”かぁ、、。
拍子抜けるほどあっさりした看板に、またしてもロッコの想像は裏切られ
ふうう〜ん、、。
と、再び唸った。
看板の足下から大人二人が並んで歩ける程度の道が一気に村の中心までのびている。
ロッコは一本道を踏み出した。
何も連絡もせず勝手に来てしまったが、是非会わなければならない人がいる。

チャンスウィンスキー博士が師と仰ぐ人だ。
サッチーナ先生も心服しているモランゴーニュを最も愛してる人。
なだらかな下り坂だがロッコには一番歩きにくい。
ロッコは頭の奥の方から“四つ足で素早く駆けぬけちゃおう”と、
繰り返し信号が送られているのは分かっていた。
でもソロバン先生の口癖で勉強中、いつも
「一歩づつ、一歩づつですよロッコ、あせらずにね」
新しい知識を学ぶ度にロッコはすごい吸収力とどん欲さを見せる。
そしてすぐ憶えてしまう。
それをソロバン先生は危惧し、
「知識を丸呑みしてはいけません。意味を学びなさい、」
と、しょっちゅう言われ続け、その度に「一歩づつ、、ね」と、必ず優しくいい終る。
だから、どんな時でも二足歩行を守ろうと、決心したのだった。
四つ足だと“一歩ずつ!?”が、とてもむずかしいのだ。

数百メートル歩いてきた。誰とも会うことも無く、見ることも無かった。
本当に人が住んでるのかなぁ。

ふえ、え、、、、、、、何か違和感を感じていたロッコはちょうど下から上がってきたらこの辺が村全体を見渡せるところだろうと思われるところで一息ついてもう一度村を見わたして驚いた。
え〜ぇ、、そう、、、そうなんだ!
何か違う、と思った答えがわかった。
各家並みに、統一感が無いのだ。まったく、、家々がバラバラだ。
高さをそろえたり、色をそろえたりどこの国でもあたり前のことがこの村には無い。
また違う価値観の人達がいるってことかな。
ロッコは少しワクワクして来るのが分かりました。

それにしても、たしか、けいかんを損なわない為に、
という法律があるはずなんだけどなぁ、、
どこにでも、、えぇと、けいかん、? あれ、、
けいかん、、、て、、おまわりさん? いやっ、、ちがう、、
けいかん、、てなんだっけ!?

「意味も知らんで憶えていてもそれは言葉じゃない、ただのオトじゃ、オトは騒々しいだけで何も伝わらない。
それを解らない者たちが、あちこちでオトを発してうるさい世の中にしてしまったのじゃ。おまえもその仲間になる為に言葉を使う様になったというのか、ラッコ、、。!」

あ〜ぁ?!
このひとだ!!
間違いない!
聞いてたとおりの人だ。
想像どうりの人だ!

ロッコはきちんと挨拶をして、何故自分が来たのか
是非、話をきいてほしいことなどがあってきたことを告げた。

「んじゃぁ、まぁ、ついてこい」
そういうと老人とは思えぬ早足で村へと降りていった。
ロッコも慌てて遅れるまいとついて行った。

「しかし、お前の話しを聞いていると、人間とは面白いものよのう、。何でも出しゃばってやりおる。何も出来んくせにじゃが、肝心のやるべき事は、なあんもやらんできおった。お前もせっかくネコに生まれてきて、なんで人間のマネをするのじゃ、、
ネコは楽でええがじゃあ、、」
え、え、でもこのままだと地球が滅びるん、、です。
id星という悪い星が地球を狙ってるんです。
み、みんな生きてるものは死んでしまうんです!
「生者必滅、会者定離は浮き世の習いじゃ!」
ハッと後ずさりするロッコ。