第41章 X星=id星 モノクローム

宇宙で最も理解され難い星。
謎の多い星。
異端の星“X”。
その美しいオトを知ってから、この星“X”の行動はあきらかに変わりはじめていた。
かつて、気分の思うままにあちこちに出没し、片っ端からどんな星かも知らずはじき跳ばしてきた。当たりが強烈なほど破壊音はすさまじい。

小さな銀河でも、真ん中にある星を中心に、すり鉢状に上に散らばってる星の一つ一つが互いの引力で調和を保っている。
一つでもいきなり欠けたらすり鉢の中の均衡はまたたくまに崩れてしまう。

X星の暴発により、忽然と湧いたオトのツナミに引力も磁場も一瞬にして取り込まれ、連鎖する星群も少なからずその影響を受けてしまう。そのことがいかに無謀なことかも、その星は知らない。宇宙では大問題であるのに。

あるとき、この宇宙の総てを生んだ処が、遠い彼方にあることを知る。
躊躇なくそこに向かった。
幾万年過ぎただろうか、ビュンビュン時を超えていく。
出発してまだ1時間もたたない。ものすごいスピードだ。
たっぷり補給したエネルギーを全開にして飛びつづけている。
その地を目指して、どの位かかるのか、どこまで行けば良いのか、何も知らない。
ただひたすら、旅を続けている。

その星を支えるものはなにもない、かつても、これからも。
いつまで 行っても、どこまで 行っても、途切れることなく溢れ出てくる無数の星が、その異端の星の横を、前を、後ろを、上を、下を、絡んではみるが、結局、どの星一つとして寄り添うものはない。かつても、これからも変わることはないだろう。

望んだ訳でも、頼んだ訳でもない、、
気づいた時
変わった星、普通じゃない、危ない、恐い星、、と、すでに烙印を押されてしまっていた。
仲間を集い小さな集まりから、やがてとてつもなく大きな集合体ヘと形を変えていくことも、個々の星に与えられた役割の一つだったが、ついぞ、この異端の星に限っては、誰も、何も、係わる気配さえ見せなかった。
もとよりその星も望むところではなかった。

広大な宇宙には侵し難い秩序がある。宇宙に棲みつくものの暗黙のルール。
だがこの星は守らなかった。いや、知らなかった。この星は何も知らない。

あの爆発と共に産声を上げ180億年閉じ込められていた空間を突き破り、初めて表にでたのだ。
自らを自由にコントロールすることのできる“意志”をもった惑星。
凄まじい爆発音と共に育ったこの星の母はオトかもしれない。
オトのない宇宙でオトを求めた。
秩序は瞬く間に壊れる。暴走を繰り返してきた。

そしていま、この異端の星は“宇宙の始まり”に向かってつきすすんでいた。
そこであのとき何が起こったのか
自分がどうして生まれたのか
なぜいつも独りなのだろう
何がほかの星と違うのか、、、確かめたかった、、。
そんな思いにかられたのも、あのとき、あんなことがあったからだった。
それは、地球を狙って月と接触した時だった。
正面からたっぷり浴びてしまった、初めて聞く知らないオトの世界。
急になえていく闘争心、、どんどん湧き出る好奇心。
いたたまれず逃げ帰った、、、あのときのこと。
好奇心は時と共にふくらみ、月が発したオトはいつまでも体にまとわりつき、感情を揺さぶって離さない。
整理整頓されて、自由で、調子がよくエネルギーにも程よく変わり、なんといっても心地の良さだ。
忘れることができないこの感触は地球を“狙った”時に得た。と、そう、記憶に固めてしまった。
再び地球を狙うことを夢見る事になる。

しかし、地球は侮れない、という教訓も得ている。
この宇宙にどれほどの数の星があるかしらない。
ただ地球という星は特別になった。
こういう生き方しか知らない。
この星は唯一“愛”を知らずに成長したのだから。
長い旅を経て、ついに、この宇宙のはじまりに近づいた。
そこに見たものは行く手を阻む巨大な壁である。
こんな壁ごとき、と、思ったのは当然だった。

思いっきりぶつかった
ゴーン、ゴーン、ゴーン、
拍子抜けするほど軽いオトがかえってくる

こんなことって!?
ゴーン、ゴーン、ゴーン

東洋の古い町を訪ねた時、夕刻、山寺から鳴り響くのんびりとしたオトに似ている。

我が物顔にふるまってきた。
どんな星でも崩してきた。
どうしたんだろう。
壁は依然としてその威容を誇るかの様に微動だにしない。
生まれて初めて知る巨大な力。
めげることなく何度も何度もぶつかった。
何故だろう。
壁の向こうを知りたいだけなのに
悲しい感情がわいてきた。

そのとき一群の星が編隊を組んでやってきた。
X星の横をゆっくり通り過ぎると壁に向かっていった。
ぶつかる!
が、、
そのまま何ごとも無く壁を通りぬけ奥へと消えていった。

呆然とその光景を見ていたが、やがて来た道を猛烈なスピードで戻っていった。