第39章 ピカピカの小学4年生 その2

「ロッコ」
「ロッコ、、!」
きイちゃんが呼んでる。
「ロッコ」
ううんんうんう〜ん
いやだ。なぜ、、ボクが?、、、、、ふう、
ぁああ、は、は、は〜〜ん、
あっ!
あぁ、、あ、また、、いじめられ、、る
「ロッコ!!」
え! だれ! あ、、ここ、どこ!?
「ロッコ!!!」
きいちゃんだ!
夢、、?夢かぁあ!
あ〜ぁ、夢、、よかった、。
でも、怖かった。
本当にいやな夢だった。

「ロッコ!!!」
ようやく夢から覚めたロッコは、きいちゃんに答えようとしますがフアッ、と、言葉にならない声しかでません。それにとっても息苦しいです。
だんだん、自分のおかれている状況がわかってきました。ロッコは、2階の大きなソファの裏と壁の間の隙間に、うつぶせになったまま、背負ったランドセルが、丁度隙間にぴったりはまってしまい、身動きが取れなくなっていたのです。きいちゃんに助けてもらいたいのに、顔が床についてしまっているので大きい声が出ません。
フア、フアァ、、、、

きょうは待ちに待った登校日です。久し振りに自宅で家族と共にきのうの夜から過ごしたロッコは、興奮して落ち着きがありませんでした。
お父さんがランドセルを買って帰ってきてくれました。ロッコの興奮は頂点に達し、早速、真新しいピカピカのランドセルを担いでと、、、思って何度もトライするのですが、ズルッと、、また試してみても、ズルッと落ちてしまいます。
ロッコは肩幅がないので落っこちてしまうのです。見兼ねたお母さんが肩掛けの部分を長く伸ばして、ロッコの胸前でクロスして、背中にまわし、腰からまたお腹に持ってきて、最後はベルトのように止める。という方法に改良してくれました。
ロッコは嬉しくって、ランドセルを背負ったまま、眠りたかったのですが
「体に悪いから」と ランドセルは椅子の上におかれ、明朝はみんな、6時に起きることを約束して、それぞれ床につきました。
でもロッコはとても眠ってなんていられず、今朝4時に起きて、ランドセルに教科書、辞書、ノート、、など詰められるものを全部詰め、一人で上手に体に巻き付けて2階の洗面室目指してそう〜と向かいました。
ゆっくりと、みんなを起さないよう、はやる心を抑えながら、一歩ずつ、ロッコは気分が高揚していたので、ランドセルの重さに気づきませんでしたが、こうして立ち上がってみると歩幅の狭いロッコには大変な重さを感じます。
みんな子供なのに良く平気だなぁ。
ロッコは体力には自信が有りましたが、人間のバランスの良さにまた驚かされました。
少し歩幅を広くしてみよう、と、
左手を前に出すと同時に左足を、右手を前にだして右足をと、肩で風きる様な歩きかたをしてみました。
これはロッコの知識の中にある“サムライ”の歩きかたです。思いがけずスム〜ズに洗面室まで来てしまいました。ドアを開けるとすぐ正面が壁一面、鏡になっています。ロッコはワクワクしてきました。ドアノブを下におろし音たてないようゆっくり開けました。
わああ!
思わず声を出してしまいました。
正面にランドセルを背負ったロッコがいます。慌ててドアを閉めて、鏡に映る自分を見つめました。横向きになったり、後ろ向きになったり、体の柔らかいロッコは自由自在です。この2ヶ月間、自分のランドセル姿を何度、思い描いたかわかりません。テレビに出て自分の気持ちを一生懸命話しました。博士も随分たくさんロッコの事を話してくれました。世界中を巻き込んだので中傷、誹謗が山のようにきました。博士の家にも、お父さんの家にも。

でも、結局それ以上の、いやその何倍もの人たちの、
熱い応援があったからこそ、いま鏡に映ってるこの姿があるんだ。
ロッコはこみ上げてくるものに逆らわず、鏡の自分が少しずつ変わっていくのを眺めていました。

勉強するぞおぉぉ!
ロッコは、雄叫びを上げました。鏡のロッコに向かって、、。急に心が弾んできました。何か思いっきり動いてみたくなりました。
そうだ、2階にも広い客間がある。
その後、客間でロッコが思う存分、暴れたのは、言うまでもありません、、
よほど嬉しかったのでしょう。久しぶりに童心に、いやネコに戻って、壁を駆け上がったり、カーテンをパッとひと抱きしてスルスルと降りて、ソファの上に軽くジャンプ、背もたれの上から下を見たとき、ネコなら、どんなネコでも、歩いてみたい気持ちに駆られる、薄暗い細い道が、長いソファにそって突き当たりの壁まで続いていた。ここを歩かないネコはいない。
飛び下りた。
ドサ! ランドセルが途中でソファと壁に挟まり手足がつく前に宙ぶらりんになってしまいました。ロッコは手足をバタつかせ、ようやく着地したのですがランドセルが重くうごくことができなくなっていました。

「ロッコ!、ロッコ!あぁ、! こんなところにいた! ロッコなにしてるの? お父さん、、ロッコがいたょ!」
きいちゃんが大きい声でわめいている。
「2階よ!客間のソファの裏にいる! ロッコ、ロッコ、どうしたの、ねぇ、寝てるの!?」
きいちゃん起して、、、動けないの、、、

お父さんとお母さんが飛んできました。
「だいじょうぶかいロッコ?」
ボク、、ここにはまっちゃって、、背中が重くて、動けなくて、そしたら、、、
眠ちゃったみたいで、、

きいちゃんがソフアを壁から、よいしょとばかりに離しました。
空いた隙間にお父さんが入って引き上げてくれました。

「重いなぁ!ロッコ、、」
そしたら、学校行く途中で、、もちろん、、だから夢の中なんだけど、、、
「なんだいロッコ、こんなにたくさん入れて、、」

ランドセル開けたお父さんがあきれ顔でいいました。
「百科事典まではいってる! いらないんだよ、、外国語辞典、カール・マルクス『資本論』!? 小学校だよ、ロッコ、まいったなぁ、、これじゃぁランドセル重くておきれないはずだよ」
そしたら、、みんなに、、いじめられて、、
「ロッコがいじめられたの!? だれにさ!」
みんなに。
「え〜!ちょっと私がいってとっちめてやるわ、だれ、がき? イヌ?」
「ちょっと、きい、夢の話だって、、なぁロッコ」
こくりとうなずいたロッコ。
「なあんだ、、夢、そうか、、」腕まくりしたきいちゃんが少し残念そうにまくった袖を元に戻しました。本気モードでした。

お父さんが正面の窓に近づいてそっとカーテンに手をかけました。
「すごいなぁ、朝の6時だというのにごくろうさまだ。ロッコみてごらん」
きいちゃんが先に飛んできました。
「なに、なにどうしたの!?」
ロッコもきいちゃんの横から下をのぞきこみました。
「わ!わ!わ!っっっ!」
と、きいちゃんが興奮して妙な声を上げました。

ロッコは信じられない光景に息をのんでました。黒山の人だかりです。
門にあるそんなに大きくない鉄格子が人の波を受けて、いまにも折れそうです。完璧な二重サッシのおかげで、門前の喧噪から音ひとつ聞こえてこない。びっしりと一つの隙間さえ惜しむかのように埋め尽くした人たちが、無音の中、何か口々に叫んでいる様が、少し離れた二階の窓からみているロッコたちに不思議な感覚をあたえている。
あ! とら吉親分がいる、シマとらもクマとらもみんないる。
誰かが2階のロッコを指差して叫んだ。
顔、顔、顔が一斉にこちらを振り向いた。無音で劇しくたかれるフラッシュ。
皆口々に“ロッコォ〜”
と叫んでいるのが顔つき口元で容易にわかる。
お父さんがやむおえないといった表情で窓のノブをつかむと
「いいね、手を振って応えるんだよ」
コクリとうなずいたロッコ。
ほぼ同時に窓が開け放たれた。
想像以上に熱い大歓声が、早朝の外気の清々しさと交じりあってロッコの全身を包んだ。
「ロッコ?!」「ロッコ?」わああ〜わあ〜あ、、、!!
ものすごい歓声です。マスコミだけではありません。歳若い女の子達が手に手に花束やプレゼントを持って
「ロッコ?!」と嬌声をあげています。
とら吉親分もロッコに向かって顔を激しく左右に振り、しっぽは扇風機のように回りだすという荒々しい仕草を見せています。
これは親分の本当に喜んだ時と、本当に怒った時の仕草がまるで同じになってしまう事をロッコはよく知っていました。
親分もあんなに喜んでくれている。と、胸が熱くなってくるのでした。子供達も大勢きています。負けてはいません。付き添っているお母さんの手をしっかり握ったまま
「ロッコだ!ロッコ、ロッコ」と、口々にさけんでいます。
「キャァ〜、ロックスターみたいロッコ!」
きいちゃんがエプロンのポケットから愛用のピンクの櫛を取り出し髪の毛をスキながら叫んだ。
「あ、そうだ、、ロッコ」お父さんがメモした紙を取り出していいました。
「7時30分に玄関前で共同記者会見だ。これはさっき話し合って決めたんだ。こんなに大騒ぎになるなんて予想もしなかったし、今、もう、相当混乱しているし事故が起きたら大変だから、まとめて共同記者会見という事になったんだよ。何しろ世界中のメディアが来てるからねぇ」
「す、すご〜い共同記者会見、、わあぁぁ、、いいなぁ」きいちゃんが目を輝かしています。
ボク、何話したらいいんだろう?

「何言ってるの! ロッコ、私とふだん喋ってる事を話せばいいのよ、、心配なら一緒にいようか、」と、ロッコとお父さんを交互にみて
「ね、、!ね、!」と、独り合点していましたが、お父さんから厳しくたしなめられてしまいました。
「きいとロッコが普段話してる事を聞く為に世界中からメディアが集まった訳じゃないんだ。今6時半だ。一時間ある。自分の気持ちを素直に話せばいいんだよ、ロッコ。うまく喋ろうなんて思う必要ないから。さッ、早く朝食たべて会見に備えなさい」
はい。
「今朝のロッコの朝食は、特製よ! ネ、お母さん!」
と、きいちゃん。
「そうよ、でも、きいちゃんがきのう夜遅くまで下準備してくれたから、、」
本当、、!? ありがとうきいちゃん。
「何言ってるの、ロッコの晴れの日だもん、あたりまえじゃない」
「じゃあ、みんな下に降りて降りて、、」
あのう、、!
「なんだい、ロッコ」
ランドセル背負っててもいい?
「えぇ! 今から? 疲れないかい」
その方が落ち着くの、、
その言葉に、みんなどっと笑ってしまいました。
こんどは必要なものだけをいれたランドセルをロッコは背負いました。
「ロッコ、胸を張って、、!」
グィーと胸を張るロッコ
「カッコイイ!!」

真新しいランドセルがとっても似合って初々しい。
ピカピカの小学4年生です!