第39章 ピカピカの小学4年生 その1

ビューンとうなり声を上げてロッコの顔めがけて飛んできた。寸前でサッとかわしたが今度は左からビューン右からビューンビューン、、ロッコは頭を左右に、身を立てたり、斜めに反転したり翻ったり、見事にかわしつづけたが、背中の何かがさっきからボコボコと音がしている。
なんだろう!?
背中が気になる。振り返ってみた。
あ!アァァーん!
買ってもらったばかりのランドセルが、見るも無惨に変わり果てていた。ほんの数分前、家をでるときまでは、あんなにピカピカときれいだったのに、、。何かがべっとりと、、、真っ赤にこびりついている。
ロッコは匂いですぐわかった。トマトだ。
悔しさがこみ上げてきた。
あの程度の攻撃に怯むものではないけれど、お父さんに買ってもらったランドセルがこんなになってしまうなんて、身をかわしたと思っていたけれどランドセル分の厚みはすっかり計算外だった。
道路と公園をわけるように高いフェンンスが続いている。その一ヵ所に悪ガキ達は陣取ってる。先ほどから盛んに囃し立てている。
「ヤーイ、ネコのくせに学校行くんじゃねーぞ!!」
「ネコはネコらしくおとなしくしてればいいんだ」
「人間に説教なんか、何様のつもりだ!」
四方八方から罵声がとんでくる。
道の反対側では遠巻きにした大人達も、見て見ぬ振りしながらもロッコには冷たい視線を送ってきている。
突然後ろからバウバアンウワアーン!!
大型犬3頭が顔中牙をむき出しにしてロッコに突きかかって来ました。
ロッコはひらりとフェンスのトップに飛びのると、下から威嚇し続けるイヌ達を、軽く一瞥し公園内に飛び降りた。
太いリードを束ねた屈強な体躯の男が、何ごとかイヌ達に命令をすると、もの騒がしかったあたりが、何事もなかったように、元の静けさを取り戻したその時ロッコの目が光った。
公園のベンチの上に懐かしい顔を見つけた。
シマとらだ!
とら吉親分も一緒だ。
ようやく仲間を見つけロッコはこわばった顔が
柔らかくほどけていくの感じ、
“シマとら!”
“親分!”
ちょっと恥ずかしかったけれどこのいたたまれない空気をなんとかしたかったので、大きな声を上げてしまいました。
しかし、とら吉親分はロッコを見ると、あからさまにくるりと背を向けて、七三の崩れ胡座に足を組み”プイっ“とばかりに、無視をしてきました。
それを見たシマとらは、ロッコに向かって“ごめんな”と、卑屈な表情をして、、親分の半歩後ろにやはりロッコを背にして丸くなりました。
呆然とするロッコ。
そうか、人間だけじゃないんだ。
ネコからも仲間はずれになってしまったんだ。
これから毎日、こんなイバラの道を歩いて学校に行かなければならいなんて、、哀しくなってしまうロッコでした。
その時でした、後頭部にガ〜ンとロッコの顔ほどのトマトが襲いました。
一瞬の隙をつかれてしまいました。
体がふわっと軽くなり、ゆっくりと前に倒れていくのがわかりました。
“ヤバい”心の中でそう思ったのを最後に意識が薄れていきました。
悪ガキ達が“や〜い”と口々に叫びながらロッコのそばに集まってきました。
トマトがこびりつき艶を失ったランドセルをうえにして、ロッコは、うつ伏せになったまま動かない。
悪ガキ達は、ロッコのランドセルに大きな石を詰めると
“わあぁ〜い”といって散っていった。
朦朧としたまま、ロッコは僅かに残った意識にすがりながら
“なぜ?”“なぜ?”と、自問しながら、残りの力を振り絞って、立ち上がろうとしていました。

しかし背負わされた荷が重いのか、すっかり気持ちが萎えてしまったのか、、、もう立ち上がることは出来なかったのです。