第37章 ルナとロッコ

淡い月明かりにぽっこり浮かぶ二つのシルエットが寄り添うように佇んでいる。
昼間熱かったスレートもこの時間になるとひんやり気持ちがいい。二つのシルエットは同じ方向を見上げたままじっと動かない。

ルナ、わかる?
「うん、、」
あの星なんだ!ボクの大好きな星、、あとで解ったんだけど
あれが金星って言うんだよ。地球よりもっと太陽に近いんだ!
この僕たちがいる同じ太陽系の仲間だから
ルナも覚えとくといいよ。、、ルナ? どうしたの?
こんな話、退屈?
「ううん!ロッコの話は何でも楽しいよ。いつも私の知らないことばかり教えてくれるし、、でも、、、」
でも?
「でも、、ロッコは好きかも知れないけどわたしは、、」
え! 嫌いなの、、金星? どうして!?
「そうじゃなくて!、、ロッコはあの星のせいで人間のために生きる事にしたんでしょ。でもなぜ? なぜあんなにたくさんいる人間のためにロッコが何かしなければならないの? ロッコはあたしたちと同じネコでしょ?」
あぁ、、そのこと、。それは簡単に話すことはむずかしんだけど、、
ひとつ、わかって欲しいのは人間のためというよりみんなのためなんだ。
この地球に生きているみんなの、、
「知ってる!それはお母さんがいつも言ってるから」
ソロバン先生が?先生なんて言ってるの?
「ロッコのこといつもほめてる、人間でもあんなに広く深く考えようとする生徒はいなかった。さすがチャンスウィンスキー博士が見込んだだけのことはある。やっぱり地球を救うのはロッコしかいないかもしれないって」
、、、、、、、、、、、、、、、、。
「地球を救うって、どういうことなの、ロッコ?」
それは、、僕もまだわからないんだ。

そういうとロッコは遠く小さく輝く金星を見つめて、誰にはなすでもなく独り言の様に話し始めた。

自分は生まれた時からいつも空を見上げて
星を見るのが大好きだった。
あんまり目の前でピカピカしてるので捕まえたくなって思いっきり飛び上がった。
けれど、とどかなかった。
いつもキラキラとたくさんの星が寄り添いながら互いに会話してるように輝きあっている、、あの星たちのところへ行ってみたいなぁ。
いつかきっと、と思っていたら本当に迎えが来ちゃった。
そこで一杯学んだんだ。人間はボクたち動物を随分苦しめてきたと思ってきたけど、、
人間が人間を苦しめてきたことの方がはるかに多いんだ。一握りの権力者によってね。
「けんりょくしゃって? それもにんげん?」
もちろん、人間の話しだからね、、
権力者というのは、、力のある人かな、、、
「ライオンみたいな?」
ライオン!う〜ン、、ライオンは本当に力あるでしょ、
ケンカしたら一番強いって、
「え? けんりょくしゃって強くないの?」
そう、そうなんだ、、そこはまだ良くわからないんだけど
ライオンみたいに本当に強くなくていいみたい、、
「へ〜え、、、じゃぁ、ロッコがけんりょくしゃになってみんなをしあわせにしたら!?」
いや、そうじゃないということが、だんだん分かってきたんだ。
権力者とかエラい人とか呼ばれる方向にいっちゃだめなんだ。
地球はたくさんの種類の生き物がいるんだ。
ネコだってイヌだって、それに人間も、、
博士が言っていたけど地球は生き物の実験劇場だって。それぞれがどう共生して行くか、
そのために知恵を出し合っていかなければならなかったんだけど、、
もうこんなにひどくなっちゃった。
地球は答えを見つけていない、いまだに本当に価値のあることをしていく、
自分より相手のことをかんがえられるということがどんなに大事なことか、、
ボクたちネコは最も身勝手の代表といわれてきた。
でもそのネコでもできるということをみせたかった。
そうすればなんだネコに出来るならと、、みながそうなっていったら
随分と今問題になってることが変わって来るんだ。
でもこれがすごくむずかしいらしい。
誰でも、自分のことがいちばんだからね、相手のことを考えるコトができなくなってしまう、、、
ネ、、、あれ、ルナ
どうしたの?

ルナはイヤイヤしながら顔をあげようとしない。
ルナ、、
ロッコが首に手を回し優しくおこすとルナの顔は涙であふれて
とめどもない。
ルナ!
「いや、いや、ロッコはきっとどこか遠くに行ってしまう気がする」
ルナ、そんなことないよ。
いつも一緒にいるから、ネ、泣かないで。
「ロッコ、嘘でしょ、、本当のこと言って、だって、さっきみんなの為に生きることが大事って言ったじゃない」
そう、それはそう、、、動物でみんなのために生きた、、
というのはいままでいないと思う、、ましてやネコにはそんなこと考えられないし、、
それでつまりボクが、、いやボクは期待されていたんだ。
だからこれは宿命の様な、、運命の様な、、、義務とも言える。

その夜が更けて朝を迎えるまで二匹のネコは、寄り添う様にずっとそこにいたのでした。