第36章 ヴィヴァ・ロッコ・ヴィジョン

「この地球を治めている人間というのは100年かかってもネコの額ほどの土地の奪い合いに結論が出せないほどの世界なんです。3年で何が出来るというのでしょう。やはりこれは審判ではないでしょうか“人間の歴史“に対する審判ではないでしょうか。
奢りやすく、独善的で暴力好き、、これが人間の評価なのです。みなさん、それでも人間の歴史を冷静に振り返れば、何度も人間は飛躍するチャンスを与えられていたことに気づくはずです。
しかし一度たりとも振り返ることも、立ち止まることも無く、愚かなことを何度も繰り返して来たのです。そして今回我々の自尊心をあざ笑うかのような出来事となってきました。
ロッコは地球を、人間を、愛おしむ感情、「愛」その再認識と地球があと僅かな時間で大変な危機を迎えるという事を暗に匂わすという相克する運命を持って私の前に現れたのであります。
私は悩みました。この私の前にいるネコは日々どんどんと進化していくのです。もう私の頭のなかは、たくさん湧き出た疑問符も一気に掃き出され、根底から揺るがされる事となりました。何故ネコに?
人間のもっとも身近な愛玩動物、、最も知られてる動物、、これだ! 最も理解してると信じている、誰もが知っていると信じている動物だから選ばれたのです。人間以上の能力を持った新しい生命体では人間は畏れと不安でとても冷静ではいられない。でも、、ネコなら、、、“賢いネコ”と聞いても、たかがネコがと慌てる気配もおきない。
ロッコからネコと言う固定観念を外して、さらにその能力を認めて、さらにその存在を自分たちの救世主と位置づけさせる。そんなことが出来るだろうか? だいいち何のための救世主か、、誰も説明出来ない。このままでは本当にマズイ。
ロッコは言葉を自由に操り頭脳はIQ1500と、信じられないでしょうが、、事実です。いまや、、、」

“おおお〜〜〜! ウムム〜〜〜!!”
言葉にならない、、感嘆詞のみが室内を縦横無尽によこぎった。
もう、ロッコの存在に異論をはさむものはいなかった。

「そう、我々の、このプロジェクトチームに名前を付けましょう。まだ極秘ですが互いに話しをするときにも使えるような、、何か皆さんいいアイデアはありませんか?」
「地球、、防衛会議、」
「ちょっと堅すぎない」
「“R”ミーティング」
「ちょっと、シンプルすぎるかな」
「ティーム・ロッコ」
「優秀な科学者であることは間違いないんだが、、、ティーム・ロッコ!?」
「プラネット・プラン・シックス!」
「シックス!?、、、あぁ、、6人呼んだからね、でも先程もいった様に、我々は7人。たして13名の極秘プロジェクト、という事だから、シックスじゃダメ! 聞いてなかったの?」
「ヴィヴァ・ロッコ・ヴィジョン!!」
「ん!? なんだって!、、、VIVA ROCCO VISION!?」
「VIVA ROCCO VISION! 略してV.R.Vか、、いいねぇ! 誰?」
「しずこね」と、ソロバン先生が微笑んだ。
しずこが楽しそうにケラケラと笑いながら博士に向かって叫んでいた。
「VIVA ROCCO VISION!」「VIVA ROCCO VISON!」
「うん、、うん、、」

こうして始まった世にも稀な極秘プロジェクト“VIVA ROCCO VISION”は見えざる危機にむかって、どう対処するべきか日夜、白熱した議論を展開したのでした。
まず彼らが最も興味を持ったのが当然のことながらロッコであった。それはたとへ信頼する博士の説明であっても彼らの並外れた好奇心を埋め尽くすものではなかったからです。
サッチーナの提案により、6人はそれぞれが一日ロッコと一対一の対話を持つことになった。そして残りの5人は決して口を挟ま無いことを条件に観客としてその一部始終を聞くことができる。これは質問やテーマが重複することを避け、かつ自分がロッコと対する時に新たな独自のテーマを持って対話に及ぶことが出来るからです。
そして最後の3日間は全体の会議とした。
ウンベベ氏から
「自分を最後にして欲しい」と申し出があっただけで他に、異論も無く会議は静かに始まった。

しかし、後にソロバン先生の証言によると
「あれほど濃密で、深く、高度な議論を見たのは初めてでした」
と、語ったようにそれは人類最後を語るに相応しい英知溢れた議論だったようでした。