第19章 地球の危機 後編

科学は、その歩むべき道を時として見失い、迷い、とまどう。そして差し出されたその手の先に、例えようもない非道な運命がまっていることを、容易に想像ができても、科学はその手を握って離さなかった。抗うこともなく。
確かに時の為政者が権力者が、行使したのである。しかし、もし科学が、科学者がそれを拒否していたら、、、。科学を目指したものが、自己を問う宿命的ジレンマだ。だからこそ今、3年後の地球の危機に科学者として全力で立ち向かわなければならない。

しかし今回はかなり難題だ。2020年をきっかけに、人類はおおよその自然災害の予知システムを完成させていた。空に、海に、地殻に、その精度の高さは証明済みである。そのシステムに現在なんら異常は見られない。
博士とサッチーナはそれでも何かが起きる、しかも3年後にと、、2人の科学者はその“何か”に全力で立ち向かおうとしている。ロッコと会い、驚き、訝しがり、圧倒され、存在を認めて、信じた。
現在の、科学の牽引的存在を自他共に認める2人が、科学の常識を超えて、ネコのロッコの言葉を全面的に支える決心をしたのである。それだけに、、ロッコが間に合わないなんてことが起きたら、、、

「大変なことになる! ロッコが間に合わないと!!」
「間に合わない?、、、どういうこと!?」
「ロッコでも今のままではダメなんだよ、、まだ、、」
「どうして!? いまのロッコじゃダメなの」
「3年というのは、人類のための3年でもあるが、ロッコのための3年でもあるんだ」
「どういう、、、、?」
「サッチーナ、それは後にしよう。それより研究室のペーター、、いや、スザンヌに、明日の予定は全部キャンセルだっていってくれないか、、、。いや、、今年の私の予定全てだ、。少なくとも1年間だ、、それから、、」
「召集ね」
「え!、、良くわかったね、、頼めるかい?」
「もちろんです、、」
「時間がないんだ、みんな大変だろうけど1ヵ月後の25日にしよう」
「あなたは?」
「とりあえず大統領にあってくる。要職をすべてはずしてもらう、、やはり一年間だ!」
「理由は?」
「うん~む、そうだなぁ、、健康上の理由が無難だろう、、」
「ロッコはどうするの??」
「ロッコが、、どうしたって?」

博士の脳裏では、既にあらゆる想定が次から次へとはじかれていた。
「ロッコが言い出したことでしょう、この問題は」
「ネコをつれて大統領と会えって言うのかね、それは無理だ今は、まだ、、それに彼は犬好きで通ってるんだ、犬派だな、大統領は。は、は、は」
「エェエッ、、ロッコをちゃんと説明できないなら、誰に何を言っても無駄じゃない!?」
「サッチーナいいかい、ようく聞いて欲しい。ロッコをこのまま人前に出すことは今はできない。より混乱するだけだ! それに人間とネコの関係を考えてみたまえ。飼い主と飼い猫つまりペットだ、普通は、、。
いくら、とっても頭のいいネコなんです。と、いった所で、人間がネコの話に聞く耳は、持たないだろう。ロッコも何も知らされていないし、気づいてもいない。
ロッコの存在から、この危機の事にいたったのは、私と君との推測に過ぎない。つまり、まだ、不確実な事だらけなんだ。ロッコは必死だ。私はこのことに最大限協力し、ロッコを最期まで支えるつもりだ。ロッコは宇宙で愛を学び、人類のあやまちを説かれた。そのことにロッコは、どう警鐘を鳴らせるか、考えている。
もうひとつ言える事は人類にとって存亡の危機に係わる、とても恐ろしいことが起きようとしているに違いないということだ。人類はもう見捨てられてしまったのか。この広い宇宙を仕切る、もの言わぬ存在があるとすれば、その真意を見定めてみたい。
この地球が人類が抱え込んでしまった、壮大な矛盾に気がつかないことに、いい加減、堪忍袋の緒が切れつつあるということだろうか、、。人間の身勝手さにさじが投げられる寸前なんだろうか。ロッコは宇宙に行って“愛の伝道師”になって戻ってきた。けれどその驚きは序章に過ぎない。まだ誰も何も知らないんだ」

夫の久しぶりに見せる鬼気迫る表情と言動に、サッチーナは博士と出会った頃を思い出していた。