第18章 スタジオにて

「ふううぅぅ?っ」
博士は遠慮もなくこの全世界に配信している電波にむかって、大きなため息をつきました。
この番組を、固唾をのんでみていた世界中のひとたちも言葉こそ、それぞれ違いはあるけれど、“ため息”にはたいした違いはない。東も西も北も南も、全世界の人達が一斉にため息をつきました。

「ふえふぃ~」「ふわぉう」「ひふぅ」「はひはひぃ~」「ぷんファ~」「ほうぅぅ~」
地球がまるでひとつの楽器になって楽しいセッションをしたようでした。
博士は世界の人たちが、今まさに、まとまろうとする瞬間を想像していました。
「そろそろだな、、」ロッコの出番が、差し迫ってきたことも感じていました。

「私たちとロッコの日々は、それは不思議なものでした。私は要職を離れ毎日ロッコと、ともにいました。全てに利発で、一生懸命でした。
本を読むことに夢中で私の書庫から、毎日数冊読みこなしていたんではなかったでしょうか。ロッコと会ってから、いだき始めていたわたしの危惧は日に日に増幅していったのです。ロッコが私を訪ねてきた日の夜、私は眠れず朝方まで考えていました。
その日、私の目の前で起きたことは夢だったのではないか、白日夢の只中にいたのではないか、、と、、思いたかったのです。しかし、それは現実の只中だったのです。
ロッコのことをどう考えれば良いのか、、、奇跡の進化というべきか、いや、そんな陳腐な言葉で片付ける訳には行きません。
サッチーナも眠れず、互いに長い時間,議論をしました。同じ思いでした。
私たちは考える矛先を変えてみることにしました。つまりロッコというネコが、驚くべき知能をなぜ持ったかということより、なぜいま私たちの前にロッコが現れたのか、、、そのことを話し合うほうが、単に科学者の好奇心を満たすことより、より建設的ではないだろうか、と、
ロッコが今、人類に、地球に必要な理由がきっとあるはずだ。サッチーナと徹夜で話し合いました。そして私たちはある結論を得たのです」

博士の表情が今までになく固くこわばってきました。そして何か言葉をさがしてるような、躊躇しているような、、、いつもの博士の自信に満ちた態度とは、明らかに違ってきました。顔に陰りさえ見せてきました。