第9章 決意

「私は、あなたがネコである前にロッコであるあなたに、期待しているのです。世界を、、地球を、ひとつにまとめるのです、ロッコ。一瞬でも」
ひとつにまとめる? 一瞬でも?、、、どういうこと?、、
どうするの?

「あなたは自分でその答えを見つけるのです。人間社会の中に入って堂々と渡り合って、自分の存在を示し、彼らに聞く耳を持たせ、今人間達がすっかりないがしろにしてしまったこと、、、。宇宙の中での地球がどんどん存在を失いつつある。このままではとても信じられない事態が起きることになる、、。
真摯に、ロッコらしく、、その姿が、、。人々に驚きと、興奮をあたえ、そして時に賛美、賞賛の嵐に、あるいは、ねたみ中傷などの、卑しい嫉妬のうずにまきこまれることもあるでしょう。でも、それらにいっさいかまわず、あなたが成すべき事、それを理想としてまっすぐにつき進むのです。
あなたはその答えをきっと見つけるでしょう。それはあらゆる国々の、あらゆる人々に、これまで、出会ったことの無い深い感動を与えることになるのです。そしてこの感動の意味を人々は、次々と次世代に伝えていくことになるはずです。
それが、やがてこの地球が、本当に大切にすべき事に目覚め、再び情操的環境に包み込まれ、豊かな『愛』に満ちた星に変わっていく礎となるはずです。
いいですか、あなたは宇宙の本質“愛の領域”を見てきた唯一の地球の生物です。そのことに勇気と誇りを持って立ち向かいなさい。
そして全てを終えたあなたは、戻ってくることでしょう」

もどる、、どこへ?
「私たちのところへ、。戻ってくる日にちは、もうきまっています。2020年1月15日です。、、」
その日に戻ってどうなるの?
「あなたの成果を判断します」
判断?
「あなたが、地球をみまもる役目に値するかどうかです。たんなる流れ星として、人々の記憶に一瞬の印象で終わるか、100番目の星座として、永遠の記憶をうけつがれていくのか、どちらの役割を担うかは、まさにこれからのロッコ次第です」
100番目の星座って? どんな感じ、、。みんなと会えるの?
「会いに行くことは出来ませんけれど、いつもあなたはみんなを見守っています」
いつも?
「永遠に」
みんなもボクが見えるの?
「美しい地球を取り戻し、愛のある、想像力豊かな人たちなら、はっきり見えます、、、」
流れ星でおわっちゃったら、どうしよう!?
「だいじょうぶ! あなたはきっと成し遂げます。私は信じています。
あなたのとび抜けた賢さ、機智にとんだ言動、ユーモアあふれる発想は、きっと人々が思いもよらないことを考えて、驚かせ、感動させることでしょう。あなたに与えられた時間は3年です、、」
3年!? たった!? 3年って短くないですか?
「まるまる3年与えました。3年目の最後の日まで、、、3年で出来ないことは地球にはありません」
へ?、そうなんだ!

ロッコが未だ全体を掌握してないとみてその人は少し強くいった。
「この星のために生きてみなさい。別れがたいことも、たくさんあるでしょうけれど、選ばれしものの宿命です。今、この地球の未来のために“見守る”役割を担えるのはロッコ、あなただけです」
ロッコには難しいことばかりの時間でした。
でも自分でも驚く程変化していることを感じていました。少しずつ“その人”の言葉が分るようになってきましたから。それに、とにかく地球を救うことになるんだ。
長い沈黙の時が流れました。

ロッコは思った。
決めることによって、自分の運命がどんなに大きく変わるのか、まだ想像すら出来ないけれど、きっとこのほうが多くの人のためになるんだ。いや、人のためだけじゃないんだ。あの人は地球のすべての生き物のためといっていた、、、
「所詮ネコだから。と、、」散々誤解されてきたネコの歴史も、今日をもって変えることが出来るかもしれない。それに、この地球がそんなに、大変なことになってるなんて、、。そのことに、、ボク、、ボクが選ばれたんだ!

ロッコの小さな背中に、サァ~ッと凍りつくような不安と緊張がはりついた。でもロッコは少し身震いをしながらも、やるべきだと自分に言い聞かせていた。
自分しかできないことなんだ、自分が、、自分なりに、、やるんだ!
きっと大好きな家族や友達や、みんなと別れることになる。きっと、、二度と会えなくなるんだ、きっと、、。
それぞれの顔、顔が目の前に現れては消えていく、、。
ロッコはこみあげてくるものを必死にこらえ、運命を受け入れる決心をしました。
ゆっくりと自分の足腰を確かめるように上体を起こしていくロッコ、キレイなS字を描いてついに立ち上がった。あごをグッとひいた立派な二足立ちです。
その人は再びロッコの頭に手をやり、
「むだなノイズが多すぎるこの星では、これは今後とも必要ないでしょう」
と、小さく立ったロッコの耳をたたんだ。

遠く東の空を見つめたままロッコは深い瞑想にはいっていった。
まあるい頭、凛とした横顔、ネコ背じゃないすっきりとした背中のライン、幼顔は残るが決してもう子供じゃない、強い意志が全身にみなぎってる。元服したサムライの子のようだ。

その人が永い時間待った『愛』のために「理想」を求めていくネコ、“ロッコ”がついに誕生した。

その人は、朝日をあびて、もう、眩いばかりのロッコをみて最後に言った。
「これはあなたにとって夢のようなお話ですが単なる夢物語ではありません。夢をこえるのです! ロッコ!」
夢をこえる!? 夢をこえる、、、そうだ! あの時たしかに聞いた言葉だ!
「そうです。夢をこえた所にこそ本当に大切なものがあるのです。そして智恵を得るのです、ロッコ。智恵を、、」と、言い残しその人は天空に去って行きました。
後から光のオビと風のオビが二重螺旋のように互いに絡み合いながら幸せそうに舞い上がっていきました。

同時にロッコも、あたり一帯も元の色を取り戻していきました。
ロッコは、その人が去っていった東の空を永い間見上げていました。
運命を受け入れ、進むべき道をきめた若者のすがすがしさが、ロッコをつつんでいました。